サイトへ戻る

アメリカでの3ヶ月を振り返って

9月半ばから始まったPh.D. programでの1st semesterがようやくひと段落したので自分にとって初めての留学経験であるこの3ヶ月を振り返りたい.今semesterはcourseworkを主軸とし,またresearch assistant(RA)として自身の博士研究の基盤となる分野についての知識を深めた.

講義

在籍するOSU Roboticsでは実世界で活動するロボットのハードウェア/自律化技術についての講座が数多く開講されており,今期は以下の3つの講座を履修した.

  • ROB 514: INTRODUCTION TO ROBOTICS

ロボティクスに関する要素技術を幅広く紹介していく講義である.講義で取り扱う内容はロボットの力学的モデリングから始まり自律移動に関する要素技術まで(!)網羅するというかなり詰め込み気味の内容だった.もちろんこれらの知識を週4時間の講義で完璧にフォローするのは不可能なので講義内容は必ずしも深い理解に基づくものではなく,どちらかというとrobot operating system(ROS)を用いて既存packageをどのように用いれば実際にロボットを動かせるか,ということに着目している講義なのかなという感想である.また講義内容と課題の難易度に明らかにギャップがあり毎週無茶振り(例えば2次元マニピュレータのシミュレータ構築を唐突に出題される等)の実装課題を解くために必死であり,おかげで山のように吐き出されるエラーをググる能力は向上した.

  • ROB 537: LEARNING-BASED CONTROL

ロボットの自律制御のために必要な機械学習・最適化について学んだ.講義の内容は主にニューラルネットワーク(NN),遺伝的アルゴリズムをはじめとする最適化方法,Q学習等の強化学習であり,初めて触れる知識が多くかなり楽しめた.また,本講義では座学と並行してこれらの技術を用いてロボティクスに関する実問題を解くプロジェクトがあり最終的にプレゼンとpaperの執筆を行った.プロジェクトでは都市における交差点の信号制御を教師あり学習(NN)と強化学習を組み合わせることにより,実世界における交通の不確実性に柔軟に対応可能かつ既存の強化学習より効率的な最適化を目指す,というものであり自分は特にシミュレータの構築をメインとして取り組んだ.NNについては齧ったことがある,その他にについてはうっすらと聞いたことがあるぐらいの前知識かつプログラミングもそこまで出来るわけではないのでスクラッチでこれらを実装する課題や初見のシミュレータ(SUMOというライブラリであり交通網を簡単に生成できて楽しい)の構築等かなり苦労したが良い経験になったと思う.広い範囲の技術要素を扱う講義だったので今後は興味がある内容(多目的最適化等)についてさらに知識を深めていきたいという感想である.

  • CS 534: MACHINE LEARNING

機械学習についての基礎的なアルゴリズムを理論から網羅的に学ぶ講義で今学期受けた中で一番為になったと思った講義である.講義で取り扱う内容は昨今目覚ましい発展を遂げているディープラーニング ではなくより古典的(?)な教師あり分類・回帰問題を解くための機械学習法と教師なし学習(クラスタリング・次元削減)であった.修士の時に機械学習について独学で勉強しておりそこまで苦労することはないと踏んではいたが,基礎的な理論から丁寧に説明する本講義を受けて自分の知識がいかに体系的でなく穴が多いものであるかを痛感した.特に確率的な考えにについては元々苦手意識があり,それとなく見て見ぬふりをしてきたがベイズをはじめとする確率に関する考えを数式から実際に解くプロセスは機械学習やその周辺の技術要素に関する理解を深めることに大いに役立った.この講義も課題の全てがアルゴリズムのスクラッチでの実装であり,他講義と課題の提出日が重なり死にかけながら毎週末を捧げていた.毎週の課題に加えてMidterm, FinalがありMidtermで爆死した時は日本へ強制送還されることを覚悟したがFinalでなんとかカバーできたので首の皮一枚でなんとか持ち堪えることができた.Midtermは本当に酷い点数だったのでかなり反省している.ちなみにRobotics programは最低でもGPA3.0以上をキープできないと退学なので今後も試験で最悪な結果を出すのは避けたい.

他の学生がロボティクス専攻が開講している講義だけを取っている中CSの講義も受講したこともあり,毎週膨大な課題に追われて精神的にきつかったのが正直な感想である.専攻の同期にどうやってmanageしているの?と驚かれたがmanageできていないけどなんとかなった,というのが実態な気がする.知識が増えた(増やされた)ことに加えどの講義でもPythonでの実装が主だったため実装能力が少なからず向上したのは嬉しい.今後は学んだことを更に深めていき,研究にも役立てていきたい.

研究

博士課程の最初のprojectとして,現在のadvisorのもとで工業用マニピュレータの行動計画の最適化というトピックに取り組み始めている.研究は理論というよりもどちらかというとpracticalな内容ではあるが目標が達成されると業界に及ぼす影響は大きく,またlearning-basedの研究に用いられる技術要素自体に対して興味があるのでかなり楽しみな研究内容である.といっても今semesterは講義に大部分の時間を割かれていたので研究自体はほぼ進めることができず,研究を進めるのに必要な知識を得るために論文を読みそれらを実装することを行った.日本の博士課程と違いprogramの前半は講義が主で研究はあまりできない,という話は前々から聞いてはいたが本当に研究にあてられる時間が少なく改めて時間管理の難しさを思い知った.一年目からRAとして自身の全ての活動資金が大学(企業)側から出されているため来学期はより研究に重点を置き成果を出していきたい.

2019年の終わりに

2019年は東北大学で修士課程を修了し,また兼ねてから目標としていた学位留学を始める等自身の人生にとって大きなイベントがあった一年であった.思い描いていた点を線で結ぶことができたと思う一方で,自身がアメリカに来ることを決意したモチベーションを見失い指針がぶれてきているようにも感じられる.自分がどのような研究を行い博士課程を過ごしたいのか,その先でどの知識を武器にロボティクスの分野に貢献できるのか,自身がやりたいと直感で感じたことをするべきかより危険が少ない方法で博士課程を過ごすべきか,今一度雑多に積み上げられてきた考えを整理して生き残るための戦略を練り次の一年を迎えたい.

すべての投稿
×

もう少しで完了します。

あなたのメールアドレスにメールを送信しました。 読者登録の承認のため、届いたメールのリンクをクリックください。

OK